歯科医院のホームページは、医療法の広告規制の対象です。 平成29年の医療法改正(平成29年法律第57号)で、それまで原則として規制の外にあった医療機関のウェブサイトも、チラシや看板と同じく虚偽・誇大な表示が禁止され、是正命令や罰則の対象になりました。歯科ではインプラント、矯正、ホワイトニングなど自由診療の説明が多いため、ほかの診療科よりも注意する点が多くなります。

判断の基準は、厚生労働省の「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」です。令和8年3月30日に最終改正され、名称が「医療広告等ガイドライン」に変わりました。 医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)でオンライン診療受診施設が創設され、その施設の広告の規制が加わったためです。歯科医院のホームページに関わる禁止事項や限定解除の考え方は、従来と同じ枠組みで続いています。

この記事では、ガイドライン本文、同時に更新された「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」、「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(令和8年3月)にもとづいて、歯科医院が自院のホームページを点検するときの順番を整理します。

1. まず「広告に当たるか」を確かめる

ガイドラインは、次の3つをすべて満たすものを医療広告として扱います(第2の1-1)。

要件内容
誘引性患者の受診等を誘引する意図があること
特定性歯科医師の氏名や診療所の名称などが特定できること(複数の医療機関を対象にしていても該当)
内容医業・歯科医業、病院・診療所に関する内容であること

媒体は問いません。チラシ、看板、新聞・雑誌、放送のほか、「情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)」も広告の媒体として例示されています(第2の4)。医院のホームページ、SNSの医院アカウント、検索連動型の広告、メールマガジンは、いずれも広告として点検の対象にしてください。

一方で、通常は広告と見なされないものもあります(第2の5)。

  • 学会での発表や学術論文
  • 新聞・雑誌の記事(ただし費用を払って掲載を依頼した記事風広告は対象)
  • 患者さんが自ら書いた体験談や手記(医院が依頼したり謝礼を渡したりした場合は対象)
  • 院内の掲示や、院内で配るパンフレット
  • スタッフの求人広告

「これは広告ではありません」と書いても、医院名や電話番号、URLから医院が特定でき、実質的に誘引性と特定性があれば広告として扱われます(第2の2)。また、医療広告の規制は「何人も」が対象で、医院だけでなく広告代理店やアフィリエイターも含まれます(第2の6)。ホームページの制作や運用を外部に任せていても、医院が責任を免れるわけではありません。

2. 禁止される広告の7つの類型

ガイドライン第3-1は、禁止される広告を次のように整理しています。

類型根拠歯科のホームページで起きやすい例
虚偽広告法第6条の5第1項「絶対に痛くない」「一日ですべての治療が終わります」(その後の処置が必要な場合)、根拠を示さない「満足度○%」、加工した術前術後の写真
比較優良広告法第6条の5第2項第1号「地域No.1」「日本有数の実績」「最高の治療」、著名人が通っている旨
誇大広告法第6条の5第2項第2号「比較的安全な治療です」(何と比べたか不明)、活動実態のない団体の「認定医」、根拠なく「○○センター」を名乗る
公序良俗に反する広告法第6条の5第2項第3号わいせつ・残虐な画像、差別を助長する表現
広告可能事項以外の広告法第6条の5第3項「○○外来」の表記、限定解除の要件を満たさない自由診療の説明
体験談省令第1条の9第1号患者さんの感想、口コミサイトからの転載
誤認させる術前術後の写真省令第1条の9第2号説明の無いビフォーアフター写真

このほか、費用を強調した広告(「今なら○円」「期間限定50%オフ」)や、医療と直接関係の無い物品の贈呈を強調した広告は、品位を損ねるものとして「厳に慎むべき」とされています(第3-1の1(8))。

歯科でとくに問われる表現

Q&Aには、歯科に関する問いがいくつも載っています。

  • 「歯を削らない痛くない治療(99%以上の満足度)」: 「歯を削らない治療」は、削らなくても適正な医療を提供できる範囲であれば広告できます。一方「痛くない治療」のように科学的根拠がなく虚偽・誇大のおそれがある表現は広告できません。満足度の数値は、求められれば合理的な根拠を示して実証できる必要があります(Q3-22)
  • 「審美治療」: さまざまな治療の方法を含み、どの治療を提供するのかが明確でないため広告できません。ただし限定解除の要件を満たすウェブサイトでは載せられます。個々の治療として「ホワイトニング」を示す場合は、承認を得た医薬品を使い、自由診療である旨と標準的な費用を記載すれば広告できます(Q3-18)
  • 歯科用インプラント: 医薬品医療機器等法で承認されたインプラントを使う治療は、公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用を併記した場合に限り広告できます(Q3-9)

施設基準の「届出」を「認定」と書かない

事例解説書(第6版)には、歯科の新しい事例として、「口腔管理体制強化加算」や「歯科外来診療環境体制加算」の届出について誤認させる広告が加わりました。これらの加算は、医療機関が要件を満たすことを届け出るものです。「厚生労働省に認定されました」「国の認証を取得しました」のように、行政機関から特別な認定を受けたかのように書くと誇大広告に当たります。改善例として示されているのは、「加算要件を満たした歯科医院として、届出済みです」のように、届出済みである旨だけを書く形です。

3. 体験談とビフォーアフター写真

体験談は「医院が載せる」時点で禁止

医療機関が、治療の内容や効果に関する患者さんの主観的な体験談を、受診の誘引を目的として紹介することは禁止されています(省令第1条の9第1号)。体験談の内容が広告可能な範囲にとどまっていても認められません(第3-1の1(6))。

事例解説書は、次のような形も体験談の広告に当たる例として挙げています。

  • 口コミサイトに投稿された口コミを、医院のホームページに転載する
  • 医院のスタッフが、患者の立場で体験談を書く
  • 体験談を医院に都合よく編集する
  • 患者さんの直筆アンケートを加工・転載する
  • 患者の主訴として体験談を記載する

一方、個人のブログやSNS、第三者が運営する口コミサイトに患者さんが自ら体験談を書くことは、医院が広告料などの便宜を図って掲載を依頼していない限り、広告に当たりません(Q2-11)。ただし、医院が謝礼を渡して投稿を頼めば誘引性があるものとして扱われます。

術前術後の写真は「説明を同じ場所に」

いわゆるビフォーアフター写真は、患者さんを誤認させるおそれがあるものが禁止されています(省令第1条の9第2号)。術前のみ、術後のみの写真も同じ扱いです(Q2-8)。

写真に次の説明を付ければ、禁止の対象に当たりません(第3-1の1(7))。

  • 通常必要とされる治療内容
  • 費用
  • 治療等の主なリスク、副作用

説明の置き方にも決まりがあります。リンク先の別ページに置いたり、利点や長所の情報に比べて極端に小さな文字にしたりする形は採用してはならないとされています。なお、治療の効果は本来の広告可能事項ではないため、術前術後の写真を載せられるのは、次の限定解除の要件を満たした媒体に限られます。

4. 自由診療を載せるための「限定解除」の4要件

医療広告で載せられる事項は、医療法第6条の5第3項の各号に限られています。ただし、患者さんが自ら求めて入手する情報については、医療法施行規則第1条の9の2の要件を満たせば、この限定を解除して、他の事項も広告できます(第3-3)。

要件内容対象
患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であることすべて
問い合わせ先(電話番号、メールアドレス等)を記載するなどして、容易に照会できるようにすることすべて
自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項を示すこと自由診療
自由診療に係る治療等の主なリスク、副作用等に関する事項を示すこと自由診療

注意したいのは①です。インターネットのバナー広告や、検索サイトに費用を払って上位に表示させる広告(いわゆるリスティング広告)は、①を満たしません。 医院のホームページで詳しく説明している自由診療の内容でも、同じ文言を検索連動型広告の広告文に使うことはできないということです。

③の「費用」は、治療の名称と最低限の費用だけを示すのではなく、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間、回数を示すことが求められます。標準的な費用が明確でない場合は、最低金額から最高金額までの範囲(発生頻度の高い追加費用を含む)を示します。

ホームページの自由診療ページの点検表

  • 治療の名称だけでなく、通常必要な治療内容と工程が書いてある
  • 標準的な費用、または最低金額から最高金額までの範囲が書いてある(よく発生する追加費用を含む)
  • 治療期間と通院回数の目安が書いてある
  • 主なリスク・副作用が、利点と同じページに、同じくらい読める大きさで書いてある
  • 公的医療保険が適用されない旨が書いてある
  • 問い合わせ先(電話番号など)が書いてある
  • 承認を受けていない医薬品・医療機器を使う場合は、未承認である旨、入手経路、国内の承認品の有無、海外の安全性情報、救済制度の対象外である旨を書いてある
  • 同じ説明文を、バナー広告やリスティング広告の広告文に流用していない

5. 診療科名と専門医の書き方

ガイドラインが歯科の診療科名として例示しているのは「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」で、組み合わせの例として「小児矯正歯科」が挙がっています(第3-2の4(2))。一方、Q&Aは「審美治療」という表現を、どの治療を提供するのかが明確でないため広告できないとしています(Q3-18)。例示に無い名称を看板やホームページの見出しに使う前には、相談窓口で確かめてください。

専門医の資格は、日本歯科専門医機構が認定する専門医のうち、基本的な診療領域(口腔外科、歯周病、歯科麻酔、小児歯科、歯科放射線、補綴歯科、矯正歯科、歯科保存)に係るものを広告できます。令和3年10月1日の告示改正前に厚生労働大臣に届け出た団体(歯科医師は5団体5資格)が認定する資格も、当分の間は従来どおり広告できます(第3-2の4(9)、Q3-5)。「厚生労働省が認可した専門医」という書き方は、専門医の認定が学会や専門医機構によるものであるため虚偽広告の例に挙げられています。

6. 違反したときの指導の流れ

医療広告の指導は、都道府県、保健所設置市、特別区が行います。ガイドライン第5の4は、次の流れを示しています。

  1. 任意の調査と行政指導: まず説明を求め、違反が確認されれば広告の中止や是正を求める。必要に応じて広告代理店などにも調査・指導する
  2. 報告命令・立入検査(法第6条の8第1項): 任意の調査に応じない場合や、説明に疑義がある場合
  3. 中止命令・是正命令(法第6条の8第2項): 行政指導に従わない場合や、違反を繰り返す悪質な場合。命令の前に弁明の機会が与えられる
  4. 告発: 虚偽広告を是正しない場合、報告命令や立入検査に応じない場合、命令に従わない場合
  5. 行政処分: 悪質な場合は、管理者の変更命令(法第28条)や、開設許可の取消し・閉鎖命令(法第29条)も考慮される

罰則は、虚偽広告や中止・是正命令への違反が6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第87条第1号。ガイドライン本文は改正前の「懲役」の表記)、報告命令や立入検査への違反が20万円以下の罰金(法第89条第2号)です。中止命令・是正命令や告発をしたときは、原則として事例が公表されます。

また、虚偽・誇大な広告は景品表示法にも違反する可能性が高く、医薬品医療機器等法、健康増進法とも重ねて適用されうるとされています(第5の3)。

7. 自院のホームページを点検する順番

  1. 媒体を洗い出す: ホームページ、SNSの医院アカウント、ブログ、メールマガジン、リスティング広告、ポータルサイトの医院紹介、チラシ、看板
  2. 最上級・比較の表現を探す: 「No.1」「最高」「日本有数」「地域一」「他院より」を検索して消す
  3. 断定の表現を探す: 「絶対」「必ず」「痛くない」「一日で完了」を確かめる
  4. 体験談を外す: 「患者様の声」「口コミ」のページ、口コミサイトからの転載、スタッフが書いた体験記を外す
  5. 写真を点検する: 術前術後の写真に、治療内容・費用・リスクが同じ場所に書いてあるか
  6. 自由診療のページに4要件をそろえる: 上の点検表を使う
  7. 施設基準の書き方を直す: 「認定」「認証」を「届出済み」に
  8. 更新日を決める: 歯科医師やスタッフの人数、診療時間などは変わったら直す。示した時点の人数から大きく減っていれば誇大広告になりうるとされています

判断に迷う表現は、都道府県や保健所設置市の医療広告の相談窓口に確認できます。窓口の一覧は厚生労働省の広告規制のページに掲載されています。

まとめ

  • 歯科医院のホームページは医療法の広告規制の対象。ガイドラインは令和8年3月30日改正で「医療広告等ガイドライン」になった
  • 虚偽・比較優良・誇大な表現、体験談、説明の無い術前術後の写真は禁止。「痛くない治療」「地域No.1」は広告できない
  • 自由診療は、ホームページなら限定解除の4要件(患者が自ら求める媒体、問い合わせ先、治療内容と費用、リスク・副作用)を満たせば載せられる。リスティング広告やバナー広告は限定解除の対象外
  • 施設基準は「届出済み」と書く。「国の認定」は誇大広告
  • 違反には行政指導から中止・是正命令、罰則、開設許可の取消しまでの段階がある

参考資料