メインテナンスを担当制にするかチーム制にするかは、歯科衛生士の人数と休みの取り方で決め、どちらを選んでも「歯科医師の指示 → 歯科衛生士の実施 → 記録 → 歯科医師への報告」の流れを固定することが大切です。担当制の良さは患者との関係を続けやすいことですが、担当者しか分からない記録になっていると、休みや退職のたびに引き継ぎが止まります。

記録には法令と保険の両方の決まりがあります。歯科衛生士は、業務を行った場合には記録を作成して3年間保存するものとされています(歯科衛生士法施行規則第18条)。保険で算定する項目には、診療録への記載や文書の写しの添付が要件になっているものが多く、厚生労働省が公表する指導の指摘事項にも、歯科衛生士の業務記録に関するものが並んでいます。

この記事では、担当制の決め方と、メインテナンスの記録の残し方を、根拠となる条文と資料にもとづいて整理します。定期健診で来院する患者を増やす仕組みはリコール率を上げるで扱っています。

1. 歯科衛生士の業務の範囲を確かめる

メインテナンスの運営を決める前に、歯科衛生士が行う業務の法令上の位置づけを確かめておきます。

条文内容
歯科衛生士法 第2条第1項歯科医師の指導の下に、歯牙露出面・正常な歯茎の遊離縁下の付着物・沈着物を機械的操作で除去すること、歯牙・口腔に薬物を塗布すること(予防処置)
同 第2条第2項歯科診療の補助
同 第2条第3項歯科衛生士の名称を用いて行う歯科保健指導
同 第13条の2歯科診療の補助に当たっては、主治の歯科医師の指示があった場合を除き、診療機械の使用などの衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない
同 第13条の5業務に当たっては、歯科医師その他の歯科医療関係者と緊密な連携を図る
同 第13条の6正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない(歯科衛生士でなくなった後も同じ)
歯科衛生士法施行規則 第18条業務を行った場合には、その記録を作成して3年間保存する

担当制でもチーム制でも、メインテナンスは歯科医師の指導・指示の下で行う業務です。担当の歯科衛生士に任せきりにするのではなく、歯科医師がどの患者に何を指示したかが記録で追えるようにしておく必要があります。

2. 担当制とチーム制の決め方

担当制かチーム制かは、法令で決まっているものではありません。医院の体制に合わせて選びます。

観点担当制(患者ごとに担当の歯科衛生士を決める)チーム制(複数の歯科衛生士で患者を受け持つ)
患者との関係同じ人が続けて診るため、口の状態の変化や生活の事情を把握しやすい担当が替わるため、記録で情報を引き継ぐ必要がある
予約担当者の勤務日にしか予約が取れず、枠が偏りやすい空いている歯科衛生士の枠に入れられる
休み・退職担当者の休みや退職で、予約の振り替えと引き継ぎが一度に発生する1人が抜けても影響が分散する
記録担当者の頭の中に情報が残りやすく、記録が簡単になりがち引き継ぎのために記録を詳しく残す動機が働く
向いている体制常勤の歯科衛生士が複数いて、勤務日が安定している医院非常勤の歯科衛生士が多い、勤務日がばらばらな医院

どちらの場合も、次の2つを決めておきます。

  • 担当者が不在のときの代わり: 担当制でも「副担当」を決め、担当者が休みのときは副担当が診る
  • 担当の変更の手順: 退職や異動のときに、患者への説明、予約の振り替え、記録の引き継ぎを誰がいつ行うか

担当制にしている医院では、担当の歯科衛生士が年次有給休暇を取りにくくなることがあります。労働基準法第39条の年次有給休暇は、担当制であっても取得できるようにしておく必要があります。副担当の仕組みは、そのためにも役立ちます。

3. 何を、誰が記録するか

メインテナンスの記録は、歯科医師が書く診療録と、歯科衛生士が書く業務記録に分かれます。保存期間も違います。

記録書く人主な内容保存期間
診療録歯科医師傷病名、所見、診療方針、歯科衛生士に指示した内容、算定要件で記載が求められる事項完結の日から5年間(歯科医師法第23条第2項、療養担当規則第9条)
歯科衛生士の業務記録歯科衛生士実施した内容、検査の結果、指導の内容、患者の反応、次回に向けた申し送り3年間(歯科衛生士法施行規則第18条)
患者に提供した文書の写し歯科衛生士・歯科医師歯科衛生実地指導料などで患者に渡した文書算定の根拠として診療録に添付する

歯科衛生実地指導料の場合

令和8年度の歯科点数表では、歯科衛生実地指導料1(80点)は、歯科疾患にかかっている患者に対し、主治の歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が直接15分以上の実地指導を行い、指導内容に係る情報を文書で提供した場合に、月1回に限り算定できます。厚生労働省の「保険診療の理解のために【歯科】(令和8年度)」は、この場合、指導を行った歯科衛生士は主治の歯科医師に報告するとともに、患者に提供した文書の写しを提出し、業務に関する記録を作成するとしています。

流れにすると次のとおりです。

  1. 歯科医師が指示する(指示の内容を診療録に記載)
  2. 歯科衛生士が15分以上の実地指導を行う
  3. 歯科衛生士が指導内容を文書にして患者に渡す
  4. 歯科衛生士が歯科医師に報告し、文書の写しを提出する(写しは診療録に添付)
  5. 歯科衛生士が業務記録を作成する

メインテナンスで使う主な項目

メインテナンスで算定することが多い項目にも、記録の決まりがあります。

  • 歯周病検査: 令和7年度の主な指摘事項では、歯周基本検査でポケット測定・歯の動揺度の結果を診療録に記載していない、歯周精密検査でプラークチャートによる付着状況の確認をしていない、といった例が挙げられています
  • 歯周病継続支援治療: 令和8年度改定で、歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療が統合されてできた項目です。一連の歯周病治療の終了後に開始するもので、2回目以降の算定の間隔が決まっています(詳しくはリコール率を上げる
  • 機械的歯面清掃処置: 歯科疾患管理料などを算定した患者のうち、主治の歯科医師またはその指示を受けた歯科衛生士が管理しているものに、原則2月に1回に限り算定します

4. 指導で指摘される記録の不備

厚生労働省の「令和7年度 特定共同指導・共同指導(歯科)における主な指摘事項」から、メインテナンスに関係するものを抜き出すと次のとおりです。

分野指摘の例
歯科衛生士の業務記録歯科衛生士が行った業務について、記録を作成していない
歯科衛生実地指導料歯科衛生士に行った指示内容等の要点を診療録に記載していない。情報提供文書を作成していない、写しを添付していない。プラークチャート等を用いたプラークの付着状況の指摘を実施していない。実地指導を15分以上実施していない
歯周病患者画像活用指導料撮影した口腔内カラー写真を診療録に添付、またはデジタル画像を電子媒体に保存して管理していない
歯周病検査検査結果を診療録に記載、または結果の分かる記録を添付していない
歯科疾患管理料歯周病の患者で、歯周病検査の結果を踏まえた治療方針等を含む管理計画を作成していない
診療録の書き方修正液による訂正、独自の略称、書き換え可能な筆記用具による記載。電子カルテで「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第6.0版)に準拠していない事項

多くは「行ったことを記録していない」「記録の場所が決まっていない」ことから生じます。担当制の医院では、担当者が患者のことをよく分かっているぶん、記録が簡単になりやすい点に注意が必要です。個別指導の選ばれ方と当日の流れは歯科の個別指導にまとめています。

5. 記録の型を決める

記録の漏れを防ぐには、毎回同じ順番で書ける「型」を医院で決めておきます。

歯科衛生士の業務記録の項目の例

項目書く内容
日付・担当者実施日、実施した歯科衛生士の氏名
歯科医師の指示誰の、どんな指示にもとづいて行ったか
口の状態プラークの付着状況、歯肉の状態、検査の結果(検査を行った場合)
実施した内容行った処置・指導の内容と時間(時間が算定要件になっている項目は必ず)
患者への説明説明した内容、渡した文書
歯科医師への報告報告した内容と、報告した相手
次回に向けて次回の間隔、次回に確かめること、担当以外が診るときの申し送り

記録を書く時間を枠に入れる

メインテナンスの予約枠の中に、記録を書く時間を含めておきます。患者の入れ替えの合間に記録を後回しにすると、その日のうちに書けず、記載漏れの原因になります。診療録は、診療の都度、遅滞なく記載することが求められています(令和7年度の主な指摘事項にも「診療の都度、遅滞なく診療録の記載を行っていない」とあります)。

6. 引き継ぎの手順

担当の変更や、担当者の長期の休みのときは、次の手順で引き継ぎます。

  1. 対象の患者を一覧にする: 担当している患者、次回予約の日時、次回の間隔
  2. 記録を確かめる: 業務記録と診療録に、申し送りが書かれているか。書かれていなければ担当者が追記する
  3. 新しい担当を決める: 副担当がいれば副担当に、いなければ枠の空いている歯科衛生士に
  4. 患者に知らせる: 次回の来院時に、担当が替わることを伝える。予約の変更が必要な患者には連絡する
  5. 最初の回で確かめる: 新しい担当は、最初のメインテナンスで記録と実際の口の状態を突き合わせる

7. 毎月の点検表

  • 歯科衛生士の業務記録が、実施したすべての日に作成されている
  • 歯科衛生実地指導料を算定した患者に、指示の要点(診療録)、文書の写し、業務記録がそろっている
  • 歯周病検査の結果が、診療録に記載または添付されている
  • 口腔内カラー写真を使った項目で、写真の保存場所が決まっている
  • 担当者ごとの次回予約の枠が、次の間隔分以上先まで開いている
  • 副担当が決まっていない患者がいない
  • 3年を過ぎた業務記録、5年を過ぎた診療録の扱い(保存・廃棄)の手順が決まっている

まとめ

  • 担当制かチーム制かは、歯科衛生士の人数・勤務日・休みの取り方で選ぶ。担当制でも副担当と引き継ぎの手順を決める
  • メインテナンスは歯科医師の指導・指示の下で行う業務(歯科衛生士法第2条・第13条の2)。指示と報告を記録で追えるようにする
  • 歯科衛生士の業務記録は3年保存(施行規則第18条)、診療録は5年保存。書く人と中身を分けて決める
  • 歯科衛生実地指導料は、指示・15分以上の指導・文書の提供・報告と写しの提出・業務記録がそろって算定できる
  • 指導の指摘の多くは「記録していない」こと。記録の型と、書く時間を予約枠に入れる

参考資料