リコール率を上げるには、①医院で定義を決めて毎月数える、②治療や定期健診の最終日に次回の予約をその場で取る、③予約の無い患者・途切れた患者に連絡する仕組みを作る、の3つが基本です。はがきやメールの文面を工夫する前に、「誰を分母にして、何を来院とみなすか」を決めなければ、改善したかどうかが分かりません。

定期的に歯科医院に通う人は、すでに多数派です。厚生労働省の「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要」によると、「この1年間に歯科検診(健診)を受けた」と答えた人は全体の63.8%(男性60.6%、女性66.5%)で、受診機会別では「(かかりつけ)歯科医院での定期的な検診(健診)」が55.7%で最も多くなっています。一方、20〜24歳の男性は36.4%と低く、年齢や性別で大きな差があります。

この記事では、リコール率の定義の決め方、令和8年度の歯科点数表で決まっている算定の間隔、予約の取り方と連絡の仕組みを、実際に使える手順として整理します。

1. リコール率の定義を決める

「リコール率」には、法令や統計で決まった定義はありません。医院ごとに数え方が違うため、他院の数字とは比べられません。大切なのは、自院で1つの定義を決め、毎月同じ方法で数え続けることです。

分母と分子の決め方

決めること選択肢の例決めるときの考え方
分母(対象となる患者)治療が終わり定期管理に移った患者/前回の定期健診に来た患者/歯科疾患管理料などで継続管理している患者医院が「定期的に来てほしい」と考える患者を、レセプトコンピュータや予約システムで抜き出せる条件で決める
分子(来院した患者)予定月に来院した患者/予定月から1か月以内に来院した患者予約の変更で1か月ずれる患者をどう扱うかを先に決める
数える時期毎月末に、前々月が予定月だった患者を数える予定月の翌月まで待ってから数えると、遅れて来た患者を取りこぼさない

あわせて数える指標

リコール率だけを見ると、原因が分かりません。次の数字も同じ月に数えます。

  • 次回予約の取得率: 治療の最終日・定期健診の日に、次回の予約を取って帰った患者の割合
  • 予約の無断キャンセル・当日キャンセルの件数: 定期健診の枠のうち、来院しなかった件数
  • 途切れた患者の数: 予定月から一定期間(たとえば3か月)が過ぎても来院も予約も無い患者の数
  • 歯科衛生士の定期健診枠の埋まり具合: 予約枠のうち予約が入っている割合

数字の出し方は、使っているレセプトコンピュータや予約システムで抜き出せる項目によって決まります。最初の月に、受付と歯科衛生士の責任者が同じ手順で数えられるか試しておきます。

2. 保険で決まっている算定の間隔

定期健診の間隔は、歯科医師が患者の口の状態を見て判断します。ただし、保険で算定できる間隔には決まりがあり、予約の枠を組むときの前提になります。令和8年度の歯科点数表で主なものは次のとおりです。

項目(令和8年度)点数算定の間隔など
歯科疾患管理料(B000-4)90点1回目は患者等の同意を得て管理計画を作成・説明した場合。2回目以降は、1回目を算定した月の翌月以降、月1回に限る
機械的歯面清掃処置(I030)72点歯科疾患管理料などを算定した患者で、主治の歯科医師またはその指示を受けた歯科衛生士が管理しているものに、原則2月に1回に限る(妊婦、一定の糖尿病患者などは月1回)
歯周病継続支援治療(I011-2)1歯以上10歯未満 170点/10歯以上20歯未満 200点/20歯以上 350点一連の歯周病治療の終了後に開始。2回目以降は、前回実施月の翌月の初日から起算して2月を経過した日以降(歯周外科手術を行った場合や、口腔管理体制強化加算の届出をした診療所で開始した場合などは例外)

令和8年度の改定で変わった点

令和8年度の改定で、それまでの「歯周病安定期治療」と「歯周病重症化予防治療」は統合され、「歯周病継続支援治療」に改称されました(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)」)。口腔管理体制強化加算の施設基準を届け出た診療所で歯周病継続支援治療を開始した場合は、口腔管理体制強化加算として120点が加算されます。また、糖尿病などで歯周病が重症化するおそれのある患者に、他の保険医療機関(歯科診療のみを行う医療機関を除く)からの情報にもとづいて歯周病継続支援治療を行い、診療情報を提供した場合は、重症化予防連携強化加算として100点が加算されます。

名称が変わったため、院内の説明資料、予約システムの項目名、患者向けの案内に古い名称が残っていないかを確かめておきます。

予約の枠に落とし込む

算定の間隔は「この日より前には算定できない」という下限です。予約を取るときは、次の点を受付と歯科衛生士で共有します。

  1. 患者ごとに、歯科医師が決めた定期健診の間隔(たとえば3か月ごと)を診療録と予約システムに残す
  2. 次回予約の候補日は、算定の間隔を満たす日から選ぶ
  3. 算定の間隔を満たさない日に来院を希望された場合の扱い(算定できる項目、できない項目)を、受付が説明できるようにしておく

3. 次回予約をその場で取る

まず整えたいのは、治療や定期健診の最終日に次回の予約を取って帰ってもらう流れです。予約が無い患者に後から連絡して来院してもらうのは、予約を取って帰った患者に比べて手間がかかります。

最終日の流れ

  1. 診療室で: 歯科医師または歯科衛生士が、次回の定期健診の必要性と間隔を説明する(歯科疾患管理料の管理計画や、歯周病検査の結果を使う)
  2. 診療室で: 説明した内容と次回の間隔を診療録に残す
  3. 受付で: 次回の予約日時を決め、予約カードやアプリなどで患者に渡す
  4. 受付で: 予約を取らなかった患者は、理由(予定が分からない、など)と連絡してよい方法を記録する

予約枠の設計

定期健診の予約が取りにくいと、患者は「また今度」と帰ってしまいます。3か月後などの予約は、先の枠が空いていないと取れません。

  • 歯科衛生士ごとの定期健診の枠を、少なくとも次の定期健診の間隔分(3か月ごとなら3か月以上)先まで開けておく
  • 平日の夕方・土曜など、予約が集中する時間帯の枠の数を把握し、空いている時間帯に誘導する
  • 担当の歯科衛生士を決めている医院では、担当者の休みの予定を早めに予約システムに入れる

4. 連絡の仕組みを作る

連絡のタイミング

対象連絡の時期の例方法の例
次回の予約がある患者予約日の数日前電話、SMS、メール、アプリの通知
次回の予約が無い患者定期健診の予定月の前月はがき、電話、メール
予定月を過ぎても来院が無い患者予定月の翌月電話(本人の都合と、次回の案内の要否を確かめる)
長く途切れている患者予定月から数か月後はがき(案内はここで区切る、と院内で決めておく)

連絡は、誰が・いつ・どの一覧から・何を使って行うかを決めて、担当者を置きます。受付の担当が替わっても続くよう、手順を1枚の紙にまとめておきます。

連絡先の使い方と利用目的

患者の住所・電話番号・メールアドレスを定期健診の案内に使う場合は、個人情報の利用目的との関係を確かめます。個人情報保護委員会・厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)は、別表2に「通常の業務で想定される利用目的」を例示したうえで、医療機関は自らの業務に照らして通常必要とされるものを特定して公表(院内掲示等)しなければならないとしています。

  • 院内掲示やホームページの「個人情報の利用目的」に、定期健診・予約の案内に連絡先を使うことを含める
  • 初診の問診票などで、案内の方法(はがき・電話・SMS・メールなど)の希望を聞いておく
  • 「案内は不要」と申し出た患者には送らないよう、一覧に印を付ける
  • はがきは、はがきの表面に診療の内容が読み取れる書き方をしない

連絡の記録

連絡した日、方法、結果(予約が入った、不在、案内不要と言われた)を記録します。記録が無いと、同じ患者に何度も連絡したり、連絡が漏れたりします。予約システムや患者一覧の備考欄に、決まった書き方で残します。

5. 毎月の点検

月に一度、受付と歯科衛生士の責任者で次の表を確かめます。

点検すること見る数字数字が悪いときに見直すこと
リコール率自院の定義で数えた率下の4つのどれが原因かを見る
次回予約の取得率最終日に予約を取った割合診療室での説明、予約枠の空き
キャンセル無断・当日キャンセルの件数前日の連絡の有無、予約の取り方(無理な日時で取っていないか)
途切れた患者一定期間来院も予約も無い患者の数予定月の前月・翌月の連絡が行われているか
定期健診の枠予約の入っている割合枠が埋まっていれば枠の数、空いていれば連絡の手順

定期健診の記録そのものも、あわせて点検します。厚生労働省の「令和7年度 特定共同指導・共同指導(歯科)における主な指摘事項」には、歯科衛生士が行った業務の記録を作成していない、歯科衛生実地指導料で歯科衛生士への指示内容の要点を診療録に記載していない、といった指摘が並んでいます(歯科の個別指導)。定期健診の患者が増えるほど、記録の漏れも増えやすくなります。

6. 始めるときの手順

  1. 定義を決める: 分母・分子・数える時期を決め、1枚の紙に書く
  2. 今の数字を出す: 過去3か月分のリコール率と次回予約の取得率を数える
  3. 最終日の流れを決める: 診療室での説明と記録、受付での予約の取り方を決める
  4. 予約枠を開ける: 定期健診の枠を、次回の間隔分以上先まで開ける
  5. 利用目的を見直す: 院内掲示とホームページの個人情報の利用目的に、定期健診・予約の案内を含める
  6. 連絡の担当と手順を決める: 誰が・いつ・どの一覧から・何で連絡するかを決める
  7. 毎月点検する: 同じ定義で数え、原因の数字を見て手順を直す

まとめ

  • リコール率には決まった定義が無い。医院で分母・分子・数える時期を決め、毎月同じ方法で数える
  • 令和6年歯科疾患実態調査では、1年間に歯科検診(健診)を受けた人は63.8%、歯科医院での定期的な検診は55.7%
  • 令和8年度改定で歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療は「歯周病継続支援治療」に統合された。算定の間隔を予約の枠に反映させる
  • まず整えるのは、最終日に次回の予約をその場で取る流れ。予約の無い患者・途切れた患者への連絡は担当と手順を決める
  • 連絡先を案内に使うことは、個人情報の利用目的として特定し、院内掲示などで公表しておく

参考資料