歯科医院の看板やチラシに載せられるのは、医療法と広告告示で「広告してよい」とされた事項だけです。 医院の名称、診療科名、診療時間、電話番号、保険診療で行う治療の方法などがこれに当たります。

ホームページとの違いは、「限定解除」が使えないことです。ホームページなら、自由診療の内容・費用・リスクを示すことで広告可能事項の範囲を超えて説明できますが、看板・チラシ・ポスター・新聞折込はその対象になりません。インプラントや矯正などの自由診療は、公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用を併記できる治療に限って載せられます。

この記事では、厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(令和8年3月30日最終改正)と「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」にもとづいて、看板・チラシの原稿を作るときに確かめる順番を整理します。ホームページの禁止表現と限定解除の全体像は、歯科の医療広告ガイドラインの記事にまとめています。

1. 看板・チラシは「広告可能事項だけ」の媒体

医療広告等ガイドラインは、広告の媒体の例として次のものを挙げています(第2の4)。

  • チラシ、パンフレットその他これらに類似する物(ダイレクトメール、ファクシミリなどを含む)
  • ポスター、看板(プラカード、建物や電車・自動車などに記載されたものを含む)、ネオンサイン、アドバルーンなど
  • 新聞、雑誌その他の出版物、放送、映写、電光によるもの
  • Eメール、インターネット上の広告など

Q&Aでは、フリーペーパーに載せた医療機関の広告も規制の対象とされています(Q1-12)。駅の看板、医院の袖看板、車体の広告、ポスティングのチラシ、地域情報誌の広告枠は、いずれも同じ基準で点検します。

医療法第6条の5第3項は、法律や広告告示で広告できるとされた事項以外は、「何人も広告をしてはならない」と定めています(ガイドライン第3-2の1)。書いてはいけないことを探すのではなく、書いてよいことのリストに入っているかで判断するのが看板・チラシの基本です。

限定解除が使えない理由

限定解除は、患者さんが自ら求めて入手する情報について、次の4つの要件を満たしたときに、広告可能事項の限定を外せる仕組みです(ガイドライン第3-3)。

  1. 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. 問い合わせ先を記載するなどして、容易に照会できるようにすること
  3. 自由診療について、通常必要とされる治療等の内容・費用等を示すこと
  4. 自由診療について、治療等の主なリスク・副作用等を示すこと

①に当たるものとしてガイドラインが挙げるのは、ウェブサイトのほか、メルマガ、患者さんの求めに応じて送付するパンフレットなどです。看板やポスティングのチラシは、見る人が自ら求めて手に取るものではないため、①を満たしません。つまり、同じ文章でも、ホームページには載せられて、チラシには載せられないことがあるということです。

2. 看板・チラシに載せてよい事項

広告できる事項は、医療法第6条の5第3項の各号と、広告告示で定められています。歯科医院の看板・チラシでよく使うものを、ガイドラインの記載にそって整理します。

区分載せてよい例気をつけること
歯科医師である旨(第1号)「歯科医師 ○○○○」日本の免許を持たない場合は書けない。外国の歯科医師である旨も書けない
診療科名(第2号)歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科「インプラント科」「審美歯科」は法令に根拠のない名称で、広告できない
名称・電話番号・所在地・管理者の氏名(第3号)略称や英語名、看板の写真、フリーダイヤルである旨、電話の受付時間、最寄り駅からの道順、地図名称は医院と認識できるものに限る
診療日・診療時間・予約診療の有無(第4号)休診日、「平日○時〜○時予約受付」、予約用の電話番号・ウェブサイトのURLガイドラインは診療日・診療時間を「可能な限り」記載するのが望ましいとしている
施設・設備・従業者(第8号)建物の外観や内装の写真、バリアフリー構造である旨、据え置き型の医療機器の一般的な名称(例「CT」)、従業者の人数医療機器の販売名は書かない
医療従事者に関する事項(第9号)歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士などの氏名、年齢、性別、役職、略歴。歯科医師の専門医資格(基本的な診療領域に限る)民間資格は書けない。非常勤は非常勤である旨や勤務日時を示す
提供する医療の内容(第13号)保険診療で行う治療の方法、施設基準を満たして届け出た旨、訪問診療の実施効果を推測的に述べない
受診の便宜を図るサービス(広告告示第4条)クレジットカードや電子決済の可否、分割払いの可否、対応できる言語、駐車場の有無・台数・料金、送迎サービス医院の外部にある店舗などは書けない

歯科医師の専門医資格として広告できるのは、日本歯科専門医機構が認定する専門医のうち、口腔外科、歯周病、歯科麻酔、小児歯科、歯科放射線、補綴歯科、矯正歯科、歯科保存の各領域に係るものです。令和3年10月1日の告示改正前に厚生労働大臣に届け出た団体(歯科医師は5団体5資格)が認定する資格も、当分の間は従来どおり広告できます(ガイドライン第3-2の4(9))。

キャッチコピーやあいさつ文も、広告可能事項(「開院○周年」など)や、医療の内容とは考えられないあいさつ文であれば広告できます(Q&A Q1-6)。「休日・夜間でも来院下さい」も広告可能な例として挙げられています。

施設基準は「届け出た旨」を書く

診療報酬の施設基準を満たし、地方厚生局に届け出た場合は、その基準に適合している旨、基準の内容、届出日を広告できます(ガイドライン第3-2の4(13)イ②)。一方、厚生労働省の事例解説書(第6版)は、「口腔管理体制強化加算」などの届出について、行政から特別な認定を受けたかのように書く広告を誇大広告の事例として新たに載せています。看板やチラシでも「国の認定」「厚生労働省認定」とは書かず、「届出済み」と書いてください。

3. 自由診療は「保険外である旨と標準的な費用」を併記できるものだけ

看板・チラシでは限定解除が使えないため、自由診療の治療の方法を載せられるのは、広告告示第2条で認められた次の2つの場合に限られます(ガイドライン第3-2の4(13)ア④⑤)。

場合内容歯科での例
保険診療と同一の治療の方法を自由診療で行う手技などは保険診療と同じだが、美容などの目的で保険が適用されない治療ガイドラインは具体例として「歯列矯正」を挙げている
医薬品医療機器等法で承認・認証を得た医薬品・医療機器を使う承認等の範囲で使う治療承認を受けた歯科用インプラントを使う治療(Q&A Q3-9)、承認を得た医薬品を使うホワイトニング(Q&A Q3-18)

どちらの場合も、次の2つを併記した場合に限って広告できます。

  • 公的医療保険が適用されない旨: 「全額自己負担」「保険証は使えません」「自由診療」など
  • 標準的な費用: 一定の幅(例「10万〜12万円」)や「約○円程度」でもよいが、実際に窓口で負担する標準的な費用が分かるように示す。麻酔管理料や指導料などが別にかかる場合や、通常併用される治療がある場合は、それらを含めた総額の目安も書く

また、医薬品や医療機器の販売名は広告しないこととされています。インプラント体のメーカー名や製品名をチラシに大きく載せる原稿は、この点で直す必要があります。医師等が個人輸入した医薬品や医療機器を使う治療は、同じ成分の承認品があっても広告できません。

一方で、「審美治療」という表現は、さまざまな治療の方法を含み、どの治療を提供するのかが明確でないため広告できません(Q&A Q3-18)。ホームページなら限定解除の要件を満たせば載せられますが、看板やチラシでは使えない表現です。

術前術後の写真はチラシに載せられない

術前術後の写真(いわゆるビフォーアフター写真)は、通常必要とされる治療内容、費用、主なリスク・副作用などの詳しい説明を付ければ禁止の対象から外れます。ただし、ガイドラインは、治療効果に関する事項はそもそも広告可能事項ではないため、限定解除の対象でない場合は術前術後の写真を広告できないとしています(第3-1の1(7))。看板・チラシは限定解除の対象でないため、説明を付けても術前術後の写真は載せられません。

4. 看板・チラシで書けない表現

媒体を問わず禁止される表現は、看板・チラシでも同じです。短い文字数で目を引こうとする分、次のような表現が入りやすくなります。

表現の例扱い
「地域No.1」「最高の治療」比較優良広告として禁止
「痛くない治療」科学的根拠がなく虚偽・誇大のおそれがある表現として広告できない(Q&A Q3-22)
「1日で全ての治療が終了します」その後も処置が必要な場合は、治療内容・期間の虚偽として虚偽広告の事例に挙げられている(事例解説書)
「患者さんの声」「○○様より感謝のお言葉」治療の内容・効果に関する体験談は、医院が載せる時点で禁止
「インプラント科」「審美歯科」法令に根拠のない名称で、診療科名として広告できない
「○○外来」専門外来の表記は広告可能な事項ではない(院内掲示は広告に当たらない)
「今なら○円」「期間限定50%オフ」費用を強調した広告は、品位を損ねるものとして厳に慎むべきとされている
「ご来院の方全員に○○をプレゼント」医療の内容と直接関係のない事項を強調した誘引として、行うべきではないとされている

「満足度○%」のような数値は、求められたときに合理的な根拠を示して実証できる必要があります。根拠を示せない数値はチラシにも載せないでください。

5. 開院のチラシで気をつけること

開院の案内は、医院の名称・所在地・診療科名・診療日・診療時間・電話番号・予約の方法など、広告可能事項の中心となる情報をまとめて知らせるものです。原稿を作るときは、次の点を確かめてください。

  • 内覧会の案内は載せられる: 開院前の住民向けの説明会(いわゆる内覧会)の実施に関する事項は、「病院又は診療所の管理又は運営に関する事項」として広告可能です(Q&A Q3-8)
  • 「開院記念キャンペーン」「期間限定の割引」は書かない: ガイドラインは「ただいまキャンペーンを実施中」「期間限定で○○を50%オフ」を費用を強調した広告の例として挙げています
  • 来院者へのプレゼントを強調しない: 「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」は、医療の内容と直接関係のない事項による誘引の例です
  • 「無料相談」は費用を強調しない: 無料で健康相談を実施している旨は広告できますが、費用を強調する形は厳に慎むべきとされています(Q&A Q2-12)
  • 診療科名は4つの中から: 「インプラント科」「審美歯科」の名称を開院の看板に入れない
  • スタッフの人数は開院時点の実数で: 採用が決まっていない人数を書かない。非常勤の歯科医師は非常勤である旨を示す

なお、スタッフの募集のチラシは、医院の名称や連絡先が載っていても受診を誘引するものではないため、医療広告の規制の対象ではないとされています(ガイドライン第2の5(5))。ただし、同じ紙面に診療案内を並べれば、その部分は医療広告として点検が必要です。

6. QRコードでホームページへつなぐ

チラシに載せきれない自由診療の説明は、ホームページで行うのが基本の形です。Q&Aは、チラシに印刷したQRコードから表示されるウェブサイトについて、次のように整理しています(Q1-8)。

  • QRコードから表示されるウェブサイトも、広告規制の対象になる
  • ただし、医院の情報を得ようとする人が自ら読み込んで見るものなので、限定解除の要件を満たしていれば、限定解除できる

チラシの紙面は広告可能事項だけで作り、QRコードの先のページで自由診療の内容・費用・治療期間と回数・主なリスクと副作用を説明する、という分け方になります。QRコードの先を医院のトップページにすると、患者さんがチラシで気になった治療の説明にたどり着けないことがあるため、治療ごとの説明ページに直接つなぐ方が親切です。

同じ考え方で、患者さんの希望で送るメールマガジンやパンフレットも、限定解除の要件を満たせば限定を解除できます(Q&A Q1-11)。一方、医院の中の掲示や院内で配るパンフレットは、受け手が既に受診している患者さんに限られるため、そもそも広告に当たらないとされています(ガイドライン第2の5(4))。待合室のポスターと、駅前に出すポスターでは、同じ原稿でも扱いが違うということです。

7. 看板を出す前に確かめること

看板は、医療法の広告規制とは別に、屋外広告物法にもとづく条例の規制も受けます。国土交通省によると、屋外広告物の規制は、都道府県・指定都市・中核市が屋外広告物法にもとづいて定める屋外広告物条例で行われます。許可が必要な地域や、自家用の広告物を許可の対象から外す基準は条例ごとに違うため、看板の設置や作り替えの前に、医院の所在地の自治体の窓口で確かめてください。

8. 原稿の点検表

看板・チラシ・ポスター・折込広告の原稿を入稿する前に、次の点を確かめます。

  • 載せた事項が、すべて広告可能事項の表(第2節)のどれかに当たる
  • 診療科名は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」のいずれか(またはその組み合わせ)
  • 自由診療の治療名を載せる場合、保険が適用されない旨と標準的な費用(総額の目安を含む)を併記している
  • 医薬品・医療機器の販売名を書いていない
  • 「審美治療」「○○外来」「インプラント科」を使っていない
  • 術前術後の写真、患者さんの体験談を載せていない
  • 「No.1」「最高」「痛くない」「一日で完了」のような表現が無い
  • 割引・キャンペーン・プレゼントを強調していない
  • 施設基準は「届出済み」と書いている
  • 数値には根拠となる資料が院内にある
  • QRコードの先のページが、限定解除の4要件を満たしている

判断に迷う表現は、都道府県・保健所設置市・特別区の医療広告の相談窓口に確認できます。ホームページ以外の媒体では、Googleマップのビジネスプロフィールも医院の情報を出す場所になります。載せる情報と口コミの扱いは、Googleマップのビジネスプロフィールと口コミの記事で整理しています。集患と医療広告の記事は集患・広報のカテゴリにまとめています。

まとめ

  • 看板・チラシ・ポスター・フリーペーパーは、医療法と広告告示で認められた広告可能事項だけを載せられる媒体
  • 限定解除は、患者さんが自ら求めて見るウェブサイトやメルマガなどのための仕組みで、看板・チラシには使えない
  • 自由診療は、歯列矯正や承認品を使うインプラント・ホワイトニングなど、保険が適用されない旨と標準的な費用を併記できるものだけ載せられる。術前術後の写真は載せられない
  • 開院のチラシでは、キャンペーンや割引、プレゼントを強調しない。内覧会の案内は載せられる
  • 自由診療の詳しい説明は、QRコードでつないだホームページで、限定解除の要件を満たして行う

参考資料