歯科外来・在宅ベースアップ評価料は、歯科医師・院長を除く職員の賃上げ原資を診療報酬で確保する仕組みです。令和8年度改定で対象職種が拡大され、すでに算定している歯科医院も再届出が必要になりました。この記事では、対象となる医療機関・職種、賃金改善の目標、届出と実績報告の流れを整理します。


評価料の位置づけと(Ⅰ)(Ⅱ)の違い

歯科外来・在宅ベースアップ評価料は、対象職員の賃金改善のための原資を診療報酬に上乗せする仕組みです。(Ⅰ)は基本的な評価料で、まず届出を検討するものです。(Ⅱ)は(Ⅰ)に加えて検討する評価料で、患者数や職員数、賃金改善の規模などに応じて算定するかを判断します。すべての歯科医院が(Ⅱ)まで算定する必要はありません。対象は無床診療所・有床診療所・病院歯科で、施設の区分によって算定できる評価料や施設基準が異なります。

対象職員:歯科医師・院長は原則対象外

評価料の対象職員は、歯科衛生士、歯科助手、受付・医療事務スタッフなど、歯科医師を除く医療従事者です。令和8年度改定で対象が拡大され、次のようになりました。

区分令和8年度改定前令和8年度改定後
歯科衛生士・歯科助手・事務職員など対象対象(継続)
40歳未満の歯科医師対象外対象に追加
40歳以上の歯科医師対象外対象外(継続)
院長(管理者)対象外対象外(継続)
専ら事務作業のみを行う医療法人の役員(理事など)対象外対象外(継続)

40歳未満の歯科医師が新たに対象に加わった点は、令和8年度改定の重要な変更点です。すでに評価料を算定している歯科医院も、この対象範囲の変更を踏まえて、賃金改善計画を見直す必要があります。

賃金改善の目標

令和8年度改定では、職種によって異なる賃金改善の増率の目標が示されています。

対象職員の区分賃金改善の増率の目標
事務職員など+5.7%
その他の対象職員(歯科衛生士、若手歯科医師など)+3.2%

対象職員の給与総額の算出には、直近12か月の1か月あたりの平均値を用います。評価料で得られる収入をもとに、この目標に近づけるよう、基本給や恒常的な手当など、継続性のある賃金改善に反映することが求められています。一時的な賞与だけで済ませる計画は、目標とする賃上げの趣旨に合いません。

届出と実績報告の流れ

  1. 対象職員の直近12か月の給与総額の平均を確認する
  2. 評価料で確保できる原資を見積もり、どの職員にどう配分するかを賃金改善計画書にまとめる
  3. 厚生労働省の所定様式(Excel)を、地方厚生局の都道府県事務所の窓口へ届け出る(メール提出のほか、書面提出が認められる場合もあります)
  4. 算定を開始した後、実際に行った賃金改善の内容を実績報告書にまとめて提出する
  5. 給与台帳やレセプトの請求実績など、賃上げの実施を確認できる書類を保管する

届出どおりの賃上げが実施できていない場合、報告や返還の対応が必要になることがあるため、計画段階で無理のない配分にしておくことが重要です。

すでに算定している歯科医院の注意点:再届出

令和8年度改定で対象職種・賃金改善の目標が変わったため、すでに評価料を算定している歯科医院も、新しい要件に基づく再届出が必要です。古い届出のままでは、改定後の要件を満たさなくなるおそれがあります。次の点を確認してください。

  • 対象職員の範囲が変わっていないか(40歳未満の歯科医師を新たに含める場合、給与総額の算出に反映されているか)
  • 賃金改善の目標(事務職員5.7%、その他3.2%)に沿った配分になっているか
  • 届出の期限や様式が改定前と変わっていないか

チェックリスト

  • 対象職員の範囲を令和8年度改定の内容に合わせて確認している
  • 対象職員の直近12か月の給与総額の平均を把握している
  • 賃金改善計画書を作成し、地方厚生局へ届け出ている
  • 基本給や恒常的な手当など、継続性のある形で賃金改善に反映している
  • 実績報告に必要な給与台帳・レセプト請求実績などの書類を保管している
  • すでに算定している場合、改定後の要件に基づく再届出を行っている

落とし穴

院長自身の賃上げに使ってしまう。 院長(管理者)は対象外です。評価料の原資は、対象職員の賃金改善にあてる必要があります。

一時的な賞与だけで済ませる。 賃金改善は、基本給や恒常的な手当など、継続性のある形で反映することが求められています。

改定前の対象職員の範囲のまま届出を続ける。 令和8年度改定で40歳未満の歯科医師が対象に加わったことを踏まえず、古い届出のままにしていると、要件を満たさなくなるおそれがあります。

まとめ

  • 対象は歯科衛生士・歯科助手・事務職員など、歯科医師を除く医療従事者。令和8年度改定で40歳未満の歯科医師も対象に加わった
  • 40歳以上の歯科医師、院長(管理者)、専ら事務作業のみを行う役員は対象外
  • 賃金改善の目標は、事務職員など+5.7%、その他の対象職員+3.2%
  • 賃金改善計画書の届出と、算定後の実績報告が必要
  • すでに算定している歯科医院も、令和8年度改定の内容に基づく再届出が必要

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参考資料