歯科医院の収支は、ユニット(診療台)1台あたりの稼働時間にほぼ比例します。ユニットが空いている時間は、そのまま収入の機会を失っている時間です。この記事では、予約枠の組み方、キャンセルへの対応、リコール(定期健診)の呼び込みを見直し、ユニットの空き時間を減らす手順を整理します。


稼働率を「感覚」ではなく数字で把握する

対策を始める前に、ユニットごとの稼働時間と空き時間を実際に記録します。感覚では埋まっているつもりでも、次のような空き時間が積み重なっていることが少なくありません。

  • 当日キャンセル・無断キャンセルによる空き
  • 遅刻による、開始時間のずれ
  • 処置の合間の準備・片付けにかかる時間
  • 予約枠の組み方が、実際の処置時間と合っていないことによる空き

1〜2週間、ユニットごとに「稼働している時間」と「空いている時間」を記録すると、どの曜日・どの時間帯に空きが多いかが具体的に見えてきます。感覚で「混んでいる」「空いている」と判断するより、記録に基づいて対策を絞るほうが効果が出やすくなります。

予約枠を処置の実態に合わせる

予約枠の時間設定が、実際の処置時間とずれていると、枠が余ったり、逆に時間が押して次の予約に影響したりします。

  1. 処置の種類ごとに、実際にかかった時間を記録する(初診、定期健診、simple な処置、時間のかかる処置などに分ける)
  2. 記録した時間を基準に、予約枠の長さを見直す(実態より短い枠を組んでいないか、逆に余裕を持たせすぎていないかを確認する)
  3. 処置の種類によって、ユニットを振り分ける(時間のかかる処置と短い処置を交互に入れると、遅れが後の予約に影響しにくくなる)

キャンセル対策

当日キャンセル・無断キャンセルは、埋め直しが難しい直前の空きを生みます。次の対策を組み合わせます。

対策内容
リマインドの連絡予約の前日・数日前に、電話・SMS・メールなどで来院を確認する
キャンセル待ちの受け入れキャンセルが出た枠に、他の患者を案内できる仕組み(キャンセル待ちリストなど)を用意する
キャンセルの傾向を記録するどの時間帯・どの患者層にキャンセルが多いかを記録し、傾向をつかむ
予約時の説明予約を取る際に、キャンセルの際は早めに連絡してほしいと伝えておく
ダブルブッキングの基準キャンセルが多い時間帯に限り、一定のルールのもとで予約を重ねて受ける場合の基準をあらかじめ決めておく

無断キャンセルが多い患者層や時間帯が分かれば、その時間に予約を入れる際の案内の仕方(リマインドの頻度を増やすなど)を変えることもできます。当日キャンセルが特定の曜日・時間帯に集中している場合は、その枠にリコールや処置時間の短い患者を優先的に案内するなど、埋め直しやすい予約から先に入れる工夫も有効です。

リコール(定期健診)でユニットの空きを計画的に埋める

新規の患者やその場の処置だけでユニットを埋めようとすると、繁忙期と閑散期の差が大きくなります。定期健診(リコール)で来院する患者は、処置の内容と所要時間がある程度決まっているため、閑散期のユニットの空きを計画的に埋める材料になります。

  • 定期健診の間隔が近づいた患者を、はがき・メール・予約システムのリマインドで案内する
  • 閑散期になりやすい時間帯・曲日に、リコールの案内を優先的に送る
  • 定期健診の予約が入りやすい時間帯を把握し、新規や急患の予約枠と分けて管理する

スタッフの配置とユニットの稼働の関係

ユニットの空き時間は、予約枠やキャンセルだけでなく、歯科医師・歯科衛生士の人数と配置にも左右されます。ユニットの台数に対して担当できる人数が足りていないと、予約が入っていても診療を始められず、結果として稼働率が下がります。ユニットごとの空き時間を記録する際は、その時間に担当できる歯科医師・歯科衛生士が実際に何人いたかも合わせて確認してください。人手が足りない時間帯に予約を集中させても、待ち時間が延びるだけで稼働率の改善にはつながりません。

見直しの進め方

  1. 1〜2週間、ユニットごとの稼働・空き時間を記録する
  2. 処置の種類ごとの実際の所要時間を記録し、予約枠の長さを見直す
  3. キャンセルの傾向(時間帯・患者層)を記録し、リマインドや受け入れ方法を見直す
  4. リコールの案内を、閑散期になりやすい時間帯に優先的に送る
  5. 見直し後、再度記録して稼働率がどう変化したかを確認する

実行時につまずきやすいところ

キャンセルが出た枠を、そのまま空けてしまう。 キャンセル待ちの仕組みが無いと、直前の空きは埋め直せません。事前に受け入れ方法を決めておくことが必要です。

予約枠の長さを、処置の実態を確認せずに変える。 感覚だけで枠を短くすると、処置が時間内に終わらず、後の予約に遅れが広がります。実際の所要時間を記録したうえで見直してください。

リコールの案内を、全員に同じ頻度・同じ時期に送る。 閑散期になりやすい時間帯を把握せず案内すると、繁忙期にさらに予約が集中し、逆に稼働のばらつきが大きくなることがあります。

ユニットごとの記録を取らず、医院全体の予約枠だけを見る。 ユニットが複数台ある場合、台ごとに空き時間の傾向が異なることがあります。特定のユニットだけ空きが多い場合、担当する処置の種類や、そのユニットを使う歯科医師・歯科衛生士の予定の組み方に原因があることもあるため、台ごとに記録を分けて確認してください。

収支全体の見方は「歯科医院の収支の見方|保険・自費・費用の内訳を実態調査と比べる」も参考にしてください。