歯科医院のWeb予約は、入れるかどうかより、どの枠を開け、電話とどう使い分けるかで機能が決まります。 枠の設計を決めずに導入すると、問診が必要な患者さんまでWebで受け付けてしまい、当日の対応に追われる原因になります。

この記事では、厚生労働省の医療機能情報提供制度、令和8年6月1日から適用される選定療養のキャンセル料の新しい扱い、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインにもとづいて、予約枠の設計と患者情報を預けるときの確認点を整理します。

1. 予約枠は「問診の要否」で区分する

診療所には、医療法第6条の3にもとづき「予約診療又は予約の有無」を医療情報ネットへ報告する義務があります。Web予約を導入したら、この報告内容と、ホームページ・Googleビジネスプロフィールの記載を一致させます(歯科医院のホームページに載せるべき情報、歯科医院のGoogleマップ対策)。

そのうえで、枠を次のように区分すると運用しやすくなります。

区分Web予約への向き不向き理由
定期健診・クリーニング(リコール)向く治療内容が決まっており、事前の問診がほぼ不要
再診(継続中の治療)向く前回の診療内容を踏まえて枠を決められる
初診電話や来院時の案内が中心になりやすい主訴や既往歴の聞き取りが必要で、内容によって必要な時間が変わる
自由診療の相談(インプラント・矯正など)電話や専用フォームが中心になりやすい相談内容によって必要な時間が変わり、担当医の調整も必要

自由診療の相談枠をWeb予約に開放する場合は、歯科の医療広告ガイドラインの限定解除の考え方に沿って、予約フォームの説明文にも治療内容や費用の目安を正しく示します。

2. キャンセル料を取れるのは「選定療養の予約」に限られる

Web予約を検討する際によく出る論点が、患者都合によるキャンセルへの対応です。ここは令和8年に制度が変わりました。

厚生労働省保険局医療課は、令和8年3月27日付の通知(保医発0327第7号)で、「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」を改正し、令和8年6月1日から「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」を療養の給付と直接関係ないサービスとして扱えるようにしました。ただし、同年5月29日の事務連絡(疑義解釈資料)は、次のとおり対象を明確にしています。

「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」は、選定療養における「予約に基づく診察」において、当該診察日の直前に患者都合で予約がキャンセルされた場合に限って、患者から費用の徴収が認められたものである。

つまり、キャンセル料を請求できるのは、選定療養として「予約に基づく診察」の特別料金(予約料)を地方厚生局に届け出ている医院が、その予約について、診察日の直前に患者都合でキャンセルされた場合だけです。届出をしていない、無料の一般的なWeb予約や電話予約には適用されません。選定療養の予約に基づく診察の届出の有無は、医療機能情報提供制度の報告項目にも含まれています。

選定療養として予約料を徴収する場合、その旨と金額は院内掲示とホームページで示し、地方厚生局への届出が必要です。届出の具体的な手続きは、地方厚生局の窓口に確認してください。

3. 当日キャンセルが増えるかどうかは、確認できるデータがない

Web予約の導入で当日キャンセルが増えるかどうかを比較した公的な調査は見当たりません。断定的な数字を示すことはできませんが、確実に言えるのは、上記の令和8年6月1日からの制度変更により、選定療養の予約に限ってキャンセル料という対応策ができたということです。一般的なWeb予約のままキャンセルを減らしたい場合は、リマインド通知の送信や、キャンセル時の再予約導線をシステム側で用意しているかを、次のシステム選定の観点と合わせて確認します。

4. 予約システムに患者情報を預けるときの確認点

Web予約システムには、氏名・電話番号・生年月日、場合によっては症状などの情報を入力してもらうことになります。厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第6.0版、令和5年5月策定)で、医療機関が医療情報を扱う情報システムの安全管理について確保すべき事項を示しています。クラウド型のWeb予約システムを選ぶときは、契約前に次の点を確認します。

  • ガイドラインに沿った運用かどうか:ベンダーが医療情報を扱う前提の対策(アクセス管理、通信の暗号化、監査ログなど)を説明できるか
  • データの保管場所と委託先:患者情報がどこに保管され、再委託先があるか
  • 責任分界:システムの不具合やデータ漏えいが起きた場合、医院とベンダーのどちらがどこまで責任を負うか、契約書で確認する
  • 解約時のデータ削除:契約を終了したときに、預けた患者情報がどう削除されるか

医院のホームページやスタッフへの説明でも、患者情報の取り扱いについて何を確認したかを示せるようにしておくと、患者さんからの問い合わせにも答えやすくなります。

5. 運用の落とし穴

  • 枠の区分をしないまま開放する:初診や自由診療の相談まで無区分でWeb予約に開放すると、必要な問診時間が確保できず、来院後に時間が押す原因になります
  • 選定療養の届出なしにキャンセル料を案内する:届出をしていないのに「キャンセル料をいただきます」と案内すると、制度上の根拠がない請求になります
  • システムの契約内容を確認しないまま導入する:安全管理ガイドラインへの対応状況やデータの扱いを確認せずに契約すると、後から変更しづらくなります
  • ホームページ・医療情報ネット・Googleビジネスプロフィールで予約の案内が食い違う:どの媒体を見ても同じ案内になるようにします

まとめ

  • 予約枠は「問診の要否」で区分する。定期健診・再診はWeb向き、初診・自由診療の相談は電話や来院時の案内が中心になりやすい
  • キャンセル料を請求できるのは、選定療養として「予約に基づく診察」の特別料金を地方厚生局に届け出ている場合の、患者都合による直前キャンセルに限られる(令和8年6月1日から)
  • Web予約導入で当日キャンセルが増えるかどうかを示す公的なデータはない
  • 予約システムに患者情報を預ける前に、安全管理ガイドラインへの対応、データの保管場所、責任分界、解約時の削除方法を確認する

参考資料