自費診療の料金は、患者にとって大事な情報です。医療広告等ガイドラインも、費用を分かりやすく示すことそのものは否定していません。問われるのは示し方で、実際に窓口で負担する標準的な費用が容易に分かること、費用だけを前面に押し出さないこと、ホームページで詳しく載せるときは治療内容・期間・回数・リスクもあわせて載せることの3つが軸になります。
以下は、令和8年3月30日改正の医療広告等ガイドライン、同Q&A、療養担当規則にもとづく整理です。個別の表現が適切かどうかは、所管の窓口で確かめてください。
1. 料金を載せる場所で決まりが変わる
医療広告等ガイドラインは、医療法で広告できる事項を限定したうえで、患者が自ら求めて入手する情報については、要件を満たせば限定を解除できるとしています。料金を載せる場所は、おおむね次の2つに分かれます。
| 場所 | 扱い | 料金を載せるときに必要なこと |
|---|---|---|
| 看板、チラシ、バナー広告、検索連動型の広告など | 広告 | 自由診療のうち広告できる治療に限り、保険が適用されない旨と標準的な費用を併記 |
| 医院のホームページ、患者の求めに応じて送るパンフレットなど | 限定解除の要件を満たせば広く載せられる | 問い合わせ先、通常必要とされる治療内容・標準的な費用・治療期間・回数、主なリスク・副作用 |
ガイドラインは、インターネット上のバナー広告や、費用を払って検索結果の上位に表示されるものは、患者が自ら求めて入手する情報には当たらないとしています。同じ料金表でも、広告に転用するときは要件が変わる点に注意が必要です。限定解除の要件全体は歯科の医療広告ガイドラインで整理しています。
2. 標準的な費用の書き方
ガイドラインは、保険診療と同じ手技を美容などの目的で自由診療として行う場合や、医薬品医療機器等法の承認を得た医薬品・医療機器を使う自由診療について、次のように示しています。
- 公的医療保険が適用されない旨(「全額自己負担」「保険証は使えません」「自由診療」など)と、標準的な費用を併記する
- 標準的な費用は、一定の幅(例:「10万〜12万円」)や「約○円程度」で示してもよい
- ただし、実際に窓口で負担することになる標準的な費用が容易に分かるように示す
- 別に麻酔の費用や指導料などがかかる場合は、それらを含めた総額の目安も分かりやすく記載する
- 通常併用される他の治療がある場合は、それを含めた総額の目安も記載する
限定解除でホームページに載せる場合は、標準的な費用が明確でないときに、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すなどして、分かりやすく示すよう求めています。また、リンク先のページにだけ載せる、利点の説明と比べて極端に小さな文字で載せる、といった形はとらないこととされています。
同Q&Aは、承認を得たインプラントを使う自由診療は、保険が適用されない旨と標準的な費用を併記すれば広告できるとしています。一方、「審美治療」という表現は治療の内容が特定できず誤認を与えるおそれがあるため広告できない、とされています。
3. 避けるべき料金の示し方
| 表現の例 | ガイドライン上の扱い |
|---|---|
| 「今なら○円でキャンペーン実施中」「期間限定で50%オフ」 | 費用を強調した広告として、品位を損ねるものとして慎むべき |
| 「○○100,000円→50,000円」のような値引きの表示 | 同上 |
| 大きな価格が複数本の同時施術の条件付きで、小さな注釈でしか分からない | 注釈を見落とすと常識的に判断できる場合は誇大広告 |
| 「費用も手軽」といった印象を与える表現 | 誇大広告に当たる可能性 |
| 「痛くない治療」 | 科学的根拠がなく、虚偽・誇大広告のおそれ |
同Q&Aは、費用を太字にしたり下線を引いたりして分かりやすく示すことは差し支えないとしつつ、費用を前面に押し出した広告は慎むべきとしています。見やすく示すことと、安さで誘うことは別物と考えると判断しやすくなります。
4. 院内掲示とウェブ掲載
保険医療機関には、療養担当規則による掲示の決まりもあります。
- 院内の見やすい場所に、厚生労働大臣が定める事項を掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載する(第2条の6)
- 評価療養・選定療養などで患者から費用を受け取る場合は、あらかじめ内容と費用を説明して同意を得るとともに、その内容と費用を院内に掲示し、原則としてウェブサイトに掲載する(第5条の4)
令和8年6月からは、療養の給付と直接関係ないサービス等として「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」が加わり、疑義解釈資料では、選定療養としての予約に基づく診察で、直前に患者都合でキャンセルされた場合に限って費用を受け取れるとされています。料金表とあわせて、こうした費用の掲示も見直しておきます。
5. 料金表を作り直す手順
- 載せる場所を分ける:ホームページ、院内の料金表、広告のそれぞれで何を載せるかを決める
- 治療ごとに総額の目安を出す:本体の費用に、通常かかる検査・麻酔・仮歯などの費用を足した総額の目安を出す
- 必要な項目をそろえる:保険が適用されない旨、治療内容、期間・回数、主なリスク・副作用、問い合わせ先を同じページに載せる
- 表現を点検する:キャンペーン、割引、「痛くない」など避けるべき表現が残っていないかを確かめる
- 説明の場とそろえる:カウンセリングで渡す見積もりと、掲載している料金の目安が食い違っていないかを確かめる
カウンセリングでの説明と同意の流れは自費診療のカウンセリング、医療費控除に関する説明は自費診療と医療費控除で扱っています。
6. 見落としやすい点
- 料金表の更新漏れ:実態と異なる古い料金が残っていると、誤認を与える原因になります。
- 本体だけの価格:通常必要な費用を含めた総額の目安がないと、窓口の負担が分かりません。
- SNSや広告への転用:ホームページ用の料金表を広告に使うと、要件が変わります。
- 比較の表現:「最良」「最上」のような表現は、比較優良広告として広告できないとされています。
7. まとめ
自費診療の料金は、保険が適用されない旨と、窓口で負担する標準的な費用が容易に分かる形で示すのが基本です。ホームページで詳しく載せるときは、治療内容・期間・回数・リスクまで同じページに載せ、費用を前面に押し出す表現は避けます。料金表、院内掲示、カウンセリングの見積もりの3つを同じ考え方でそろえておくと、患者との行き違いも防げます。
参考資料
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正:https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」:https://www.mhlw.go.jp/content/001683595.pdf
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000100015
- 厚生労働省「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」(令和8年5月29日事務連絡):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001712423.pdf