子どもの定期的な来院を保険診療として続けるには、来院の目的が疾病の管理であることが前提です。むし歯になっていない子の「健診」そのものは保険給付の対象ではなく、う蝕や歯周病、口腔機能発達不全症などの診断にもとづく管理として行う場合に、歯科疾患管理料や小児口腔機能管理料などを算定します。
そのうえで大切なのは、保護者に「なぜこの間隔で来てほしいのか」を文書で伝えることです。管理計画の文書は算定の要件でもあり、来院を続けてもらう説明の土台にもなります。以下は、令和8年度の歯科点数表と留意事項の通知にもとづく整理です。
1. 健診等と保険診療の線引き
留意事項の通知(通則)は、健診等と保険診療の関係を次のように定めています。
- 健康診断、検診、予防接種等(健診等)の費用は、「療養の給付と直接関係ないサービス等」に該当する場合に別途徴収できる
- 健診等を行った保険医の医療機関で、健診等に関する疾病に対して同一日の1回の受診で保険診療を行う場合、初診料・再診料は算定できない
- 同一日または翌日以降の別の受診で保険診療を行う場合、初診料は算定できないが、再診料は規定に従い算定できる
学校や自治体の歯科健診で受診を勧められた子が来院した場合など、健診を行った歯科医師と診療する歯科医師の関係によって初診料の扱いが変わることがあります。算定の前に留意事項の通知の該当箇所で確かめてください。
2. 子どもの管理で使う主な項目
| 項目 | 点数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 小児口腔機能管理料1 | 90点 | 口腔機能発達不全症の18歳未満で、評価項目に3項目以上該当 |
| 小児口腔機能管理料2 | 50点 | 同じく評価項目に2項目該当 |
| エナメル質初期う蝕管理料 | 30点 | エナメル質に限局した白濁等の脱灰病変がある患者 |
| 乳幼児加算(初診・再診) | 40点・10点 | 6歳未満の乳幼児 |
小児口腔機能管理料とエナメル質初期う蝕管理料は、どちらも歯科疾患管理料(または歯科特定疾患療養管理料)を算定した患者が対象です。口腔管理体制強化加算の施設基準を届け出た診療所では、それぞれ加算(50点・48点)があります。
エナメル質初期う蝕管理料を算定した日に機械的歯面清掃処置やフッ化物歯面塗布処置を行った場合は、それぞれ別に算定します。フッ化物歯面塗布処置には、う蝕多発傾向者、エナメル質初期う蝕の患者などの区分があり、対象の判定と間隔は点数表と通知で確かめます。
3. 小児口腔機能管理料の要件
留意事項の通知は、小児口腔機能管理料について次のことを求めています。
- 診断:関係学会の診断基準により口腔機能発達不全症と診断されていること。日本歯科医学会の「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」(令和6年3月)を参考にする
- 管理計画の文書:口腔機能の評価と一連の管理計画を策定して説明し、計画の情報を文書で提供して、その写しを診療録に添付する
- 管理内容の記録:管理を行ったときは、管理内容を診療録に記載する(記録を文書で作成している場合はその写しを添付)
- カラー写真:成長発達に伴う変化を確かめるため、患者の状態に応じて口腔外または口腔内のカラー写真を撮る。初回の算定日には必ず撮り、その後は少なくとも3回の算定に1回以上撮る
令和8年度改定で、小児口腔機能管理料は評価項目の該当数による2区分になりました。どちらの区分で算定したかと、該当した評価項目が診療録から読み取れるようにしておきます。
4. 保護者への説明で伝えること
子どもの管理は、保護者が来院の理由を理解しているかどうかで継続が左右されます。文書に入れておきたい項目は次のとおりです。
- 今の状態:どの項目が気になるのか、むし歯になりかけている部分がどこか
- 管理の目的:何を目指して、どのような管理を続けるのか
- 次に来てほしい時期と理由:間隔を決めた理由を具体的に
- 家庭でしてほしいこと:練習、食べ方、歯みがきなど
- 写真を撮る理由:成長の変化を一緒に確かめるため
効果を約束する言い方や、ほかの子と比べる言い方は避けます。次回予約の取り方と連絡の仕組みはリコール率を上げる仕組み、担当の決め方はメインテナンスの担当制で扱っています。
5. 院内での手順
- 来院の目的を分ける:健診等として受けるのか、疾病の管理として保険診療で行うのかを受付の段階で確かめる
- 診断と評価を記録する:う蝕の状態、口腔機能の評価項目の該当を記録する
- 管理計画を文書で渡す:管理計画書を保護者に渡し、写しを診療録に添付する
- 写真の撮影時期を管理する:初回と、3回に1回以上の撮影の予定を記録の様式に組み込む
- 次回予約を取る:説明した間隔にもとづいて、帰る前に次回を予約する
6. 見落としやすい点
- 健診と同じ日の保険診療:健診等を行った医療機関が同じ日の1回の受診で保険診療を行う場合、初診料・再診料は算定できません。
- 写真の撮り忘れ:3回の算定に1回以上の撮影が抜けると、要件を満たしません。
- 歯科疾患管理料との関係:小児口腔機能管理料は、歯科疾患管理料または歯科特定疾患療養管理料を算定した患者が対象です。
- 口管強の実績:小児口腔機能管理料やエナメル質初期う蝕管理料の算定回数は、口腔管理体制強化加算の実績の要件にも関わります。
7. まとめ
子どもの定期的な来院を保険診療で続けるには、健診等との線引きを押さえ、う蝕や口腔機能発達不全症の診断にもとづく管理として記録することが前提です。小児口腔機能管理料は評価項目の該当数で90点と50点の2区分になり、管理計画の文書とカラー写真が要件に含まれます。保護者に渡す文書は、要件を満たすためだけでなく、来院を続けてもらうための説明の道具として作り込む価値があります。
参考資料
- 厚生労働省「別表第二 歯科診療報酬点数表」:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665293.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添2(歯科):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707252.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)」:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671913.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html