口腔管理体制強化加算(口管強)は、う蝕や歯周病の重症化予防と口腔機能の管理を継続して行う体制を評価する施設基準です。令和8年度改定で、施設基準の位置づけは「小児口腔機能管理料の注5に規定する口腔管理体制強化加算」に変わりました。
要件の中で最も時間がかかるのは、過去1年間の算定実績です。人員・研修・装置はそろえれば済みますが、実績は1年分の積み上げが要ります。まず現状の件数を集計し、足りない項目を見極めることが届出への近道です。以下は、令和8年度改定後の特掲診療料の施設基準通知(保医発0305第8号)と歯科点数表にもとづく整理です。
1. 施設基準の要件の全体
通知が定める要件を、確かめる順に並べ替えると次のとおりです。
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 人員 | 歯科医師が複数、または歯科医師と歯科衛生士がそれぞれ1名以上 |
| 実績(過去1年間) | 歯周病継続支援治療30回以上 |
| 実績(過去1年間) | エナメル質初期う蝕管理料と根面う蝕管理料をあわせて12回以上 |
| 実績(過去1年間) | 歯科疾患管理料(口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の管理に限る)、口腔機能実地指導料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料、歯科口腔リハビリテーション料3をあわせて12回以上 |
| 実績(過去1年間) | 診療情報提供料(Ⅰ)と診療情報等連携共有料をあわせて5回以上 |
| 他の届出 | 初診料の注1の届出。在宅療養支援歯科診療所1・2でない診療所は歯科訪問診療料の注16の届出 |
| 訪問診療 | 過去1年間の歯科訪問診療1〜3と、連携する在宅療養支援歯科診療所等に依頼した訪問診療があわせて5回以上、または訪問診療を行う別の医療機関や在宅医療の相談窓口とあらかじめ協議して体制を確保 |
| 研修 | 重症化予防の継続管理(エナメル質初期う蝕管理・根面う蝕管理・口腔機能の管理を含む)と、高齢者・小児の心身の特性、緊急時対応等の研修を修了した歯科医師が1名以上在籍 |
| 地域での活動 | 研修を修了した歯科医師が、居宅療養管理指導の実績、地域ケア会議への出席、学校歯科医等の業務など12項目のうち3つ以上に該当 |
| 連携 | 偶発症などの緊急時に対応する別の保険医療機関との事前の連携体制 |
| 訪問の担当医 | 訪問診療を行う患者に、担当の歯科医師名・診療可能日・緊急時の注意事項などを文書で提供 |
| 装置 | ユニットごとの吸引装置、AED、パルスオキシメーター、酸素供給装置、血圧計、救急蘇生セット、歯科用吸引装置 |
院内感染防止対策(初診料の注1)の要件は歯科の院内感染防止対策の施設基準で扱っています。
2. 実績の数え方と経過措置
実績は「過去1年間」の算定回数で数えます。令和8年度改定で歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療が歯周病継続支援治療に統合されたため、改定の前後で項目の名前が変わっています。
この点について通知は、令和9年5月31日までの間、歯周病継続支援治療とう蝕管理料の回数、口腔機能の管理に関する項目の回数、地域での活動のうち退院時共同指導料1や連携加算などの算定実績について、改定前の規定による令和8年5月31日以前の算定回数と、改定後の6月1日以降の算定回数を合計して差し支えないとしています。
期限の後は、改定後の項目だけで1年分の実績を満たす必要があります。月ごとの算定回数を記録しておき、令和9年6月以降も要件を満たせるかを早めに見込んでおきます。
3. 地域での活動の12項目
研修を修了した歯科医師は、次の項目のうち3つ以上に該当する必要があります。
- 過去1年間の居宅療養管理指導の実績
- 地域ケア会議への年1回以上の出席
- 介護認定審査会の委員の経験
- サービス担当者会議や多職種連携の会議への年1回以上の出席
- 過去1年間の在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の算定実績
- 在宅医療または介護に関する研修の受講
- 過去1年間の退院時共同指導料1や在宅歯科医療連携加算などの算定実績
- 認知症に関する研修の受講
- 障害児入所施設や介護保険施設での定期的な歯科健診への協力
- 自治体が実施する事業への協力
- 学校歯科医等の業務
- 過去1年間の歯科診療特別対応加算の算定実績
学校歯科医や自治体の事業への協力など、すでに行っている活動が該当することもあります。該当を示す書類(委嘱状、出席の記録、修了証など)を集めておきます。
4. 届け出た後に算定できるもの
歯科点数表では、口管強の施設基準を届け出た診療所に、次のような加算や取扱いが設けられています。
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 歯周病継続支援治療 | 開始した場合に120点を加算。2回目以降の間隔の規定(前回実施月の翌月の初日から2月経過)の例外 |
| エナメル質初期う蝕管理料・根面う蝕管理料 | 48点を加算 |
| 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料 | 50点を加算 |
| 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料など | 75点を加算 |
このほかにも、機械的歯面清掃処置の算定間隔などに口管強の届出に関わる取扱いがあります。算定の前に点数表と留意事項の通知で要件を確かめてください。
疑義解釈資料(その5)では、改定前に歯周病安定期治療などを算定していた患者について、口管強を届け出ている診療所は6月に歯周病継続支援治療を算定して差し支えないとされています。
5. 届出の手順
- 実績を集計する:レセコンで過去1年間の対象項目の算定回数を出す
- 研修の修了を確かめる:対象の研修を全て修了しているかを確かめ、不足分は補足の研修で満たせるかを確かめる
- 連携先と担当医を決める:緊急時の連携先、訪問診療の連携先、訪問の担当医と患者向けの文書を用意する
- 他の届出を確かめる:初診料の注1と、必要な場合は歯科訪問診療料の注16を届け出ているかを確かめる
- 様式17の2で届け出る:研修の修了が分かる書類(研修名・実施主体・修了日・修了者の一覧でも可)を添付する
届出の受理日と算定開始の関係は歯科の施設基準の届出で整理しています。
6. 見落としやすい点
- 実績の維持:施設基準は要件を満たしている間しか算定できません。届け出た後も、過去1年間の件数を定期的に集計して確かめます。
- 経過措置の対象外の実績:訪問診療の回数と、診療情報提供料(Ⅰ)・診療情報等連携共有料の回数は、改定前後の合算の規定の対象として挙げられていません。
- 経過措置の期限:改定前の回数を合計できるのは令和9年5月31日までです。
- 研修の修了者の在籍:研修を修了した歯科医師が退職すると要件を外れます。
- 患者への文書:訪問診療の担当医の文書は、提供したことが分かるように控えを残します。
7. まとめ
口腔管理体制強化加算は、人員・研修・装置に加えて、歯周病の継続管理、う蝕管理、口腔機能の管理、情報提供の1年分の算定実績を求める施設基準です。令和9年5月31日までは改定前の回数を合計できますが、その後も満たせるかの見込みが大切です。歯周病の継続管理を支える歯科衛生士の体制はメインテナンスの担当制、改定全体の変化は令和8年度の歯科診療報酬改定で扱っています。
参考資料
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732104.pdf
- 厚生労働省「別表第二 歯科診療報酬点数表」:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665293.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添2(歯科):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707252.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その5)」(令和8年5月8日事務連絡):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698587.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)」:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671913.pdf