令和8年度の歯科診療報酬改定は2026年6月1日に施行され、歯科の改定率は+0.31%でした。歯科医院が改定後に確かめることは、大きく分けて点数が変わった項目、名前や区分が組み替わった項目、届出をやり直す施設基準、期限付きの経過措置の4つです。点数の上下よりも、届出と経過措置の漏れのほうが返還につながりやすいため、先に届出の一覧から点検するのが実務の順番です。

以下は、厚生労働省が公表している告示・通知・疑義解釈と、地方厚生局の届出の案内にもとづく整理です。個々の医院で算定できるかどうかは、必ず原文の要件で確かめてください。


1. 改定の全体像

厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)」によると、診療報酬本体の改定率は2年度平均で+3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)で、各科の配分は歯科+0.31%です。薬価は令和8年4月に先行して改定されています。

歯科で目立つ柱は、物価と賃金への対応、口腔機能の管理の組み替え、歯周病の継続管理の統合、医療DXの加算の見直しです。改定の中身は、令和8年度と令和9年度の2段階で変わるものがある点に注意が必要です。


2. 点数が変わった主な項目

項目改定前令和8年6月以降
歯科初診料267点272点
歯科再診料58点59点
歯科外来物価対応料(新設)―初診時3点/再診時等1点(令和9年6月以降は2倍)
歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)初診時10点21点
同 再診時等2点4点
歯科疾患管理料100点90点(初診月の80%の規定は削除)
口腔機能実地指導料(新設)―46点

歯科疾患管理料は点数が下がる一方で、初診を行った月に所定点数の80%で算定する規定がなくなりました。初診月の算定が多い医院では、実際の影響は点数表だけでは読み切れないため、改定前後の同じ月の算定件数で比べると実態がつかめます。

初診料の注1の施設基準(院内感染防止対策)を届け出ていない医院は、初診料・再診料が所定点数より低い点数(初診料245点、再診料45点)になります。


3. 名前と区分が組み替わった項目

改定では、点数の上下だけでなく、算定の枠組みそのものが変わった項目があります。レセコンの設定と院内の呼び方をそろえておかないと、算定漏れや誤算定の原因になります。

  • 歯周病継続支援治療:歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療が統合され、歯数に応じた3区分(1歯以上10歯未満170点、10歯以上20歯未満200点、20歯以上350点)になりました。歯周病ハイリスク患者加算は、医科の医療機関と情報をやり取りした場合の重症化予防連携強化加算(100点)に置き換わっています。
  • 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料:評価の項目数に応じて「1」90点と「2」50点の2区分になりました。
  • 口腔管理体制強化加算:施設基準の位置づけが「小児口腔機能管理料の注5に規定する施設基準」に変わりました。
  • 電子的歯科診療情報連携体制整備加算:医療DX推進体制整備加算が組み替えられたものです。
  • 歯科衛生士の指導:口腔機能指導加算が廃止され、口腔機能実地指導料が新設されました。

歯周病の継続管理を歯科衛生士が担う医院では、メインテナンスの担当制と記録の残し方とあわせて、記録の様式を新しい名前にそろえておきます。


4. 届出をやり直す施設基準

九州厚生局が公表した「令和8年度診療報酬改定に伴う施設基準の届出等について(歯科)」では、施設基準を次のように分けて示しています。管轄の厚生局でも同じ区分の案内があるはずなので、自院の届出一覧と照らします。

区分主な施設基準
新たに届出が必要電子的歯科診療情報連携体制整備加算、口腔機能実地指導料、歯科技工所ベースアップ支援料など
改めて届出が必要歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)
改めての届出は不要初診料の注1、在宅療養支援歯科診療所1・2など

疑義解釈資料(その1)でも、改定前に医療DX推進体制整備加算を届け出ていた医療機関が電子的歯科診療情報連携体制整備加算を算定するには、改めて届出が必要と示されています。

届出の受理と算定開始の関係は、月末までに受理されたものは翌月1日から、月の最初の開庁日に受理されたものはその月の1日から算定できる、というのが厚生局の案内です。

また、定例報告は、在宅療養支援歯科診療所など一部を除いて廃止されました。ベースアップ評価料は賃金改善計画書の提出がなくなり、中間報告と実績報告の形に変わっています。報告の時期と様式は厚生局の案内で確かめます。


5. 期限付きの経過措置

改定には期限付きの経過措置があり、期限の日を過ぎると要件を満たさなくなるものがあります。院内の予定表に日付で入れておくと、期限の見落としを防げます。

  • 口腔管理体制強化加算の実績:令和9年5月31日までは、改定前の項目の算定回数を含めて実績を数えることができます。
  • 口腔機能実地指導料の研修:令和9年5月診療分までの届出に限り、研修を受講予定である旨の記載で届け出られます。6月診療分以降も算定するには、受講歴を記載して改めて届け出る必要があります(疑義解釈資料その1)。
  • 初診料の注1の研修:令和8年6月1日以降に受講する研修には、抗菌薬の適正使用の内容が含まれている必要があります(疑義解釈資料その1)。
  • 歯科外来物価対応料:令和9年6月以降、点数が2倍になります。

6. 院内で進める点検の順番

  1. 届出の一覧を作る:厚生局に届け出ている施設基準を一覧にし、上の区分と照らして届出漏れを洗い出す
  2. レセコンの設定を確かめる:名前が変わった項目、統合された項目、新設の項目が正しく設定されているかを確かめる
  3. 院内掲示とウェブ掲載を直す:施設基準や明細書の案内など、掲示する事項の中身を改定後の名前と内容にそろえる
  4. 算定件数を改定前と比べる:同じ月どうしで算定件数と点数を比べ、落ちている項目がないか見る
  5. 疑義解釈の追加を確かめる:疑義解釈資料は改定後も順次出るため、月に一度は追加分を確かめる

点検の結果は、診療録に残すべき記載の要件まで落とし込んでスタッフに共有します。算定の根拠が診療録に残っていないと、歯科の個別指導で返還を求められる原因になります。


7. 見落としやすい点

  • 点数表だけを見て判断する:同じ点数でも、留意事項の通知で算定の条件が変わっていることがあります。
  • 旧名称のまま院内で運用する:歯周病安定期治療などの旧名称のまま記録すると、要件の読み違いにつながります。
  • 経過措置の期限を過ぎる:研修や実績の猶予が切れた月から、要件を満たさなくなります。
  • 掲示の更新漏れ:院内掲示の事項は、原則としてウェブサイトへの掲載も求められています(保険医療機関及び保険医療養担当規則第2条の6)。

8. まとめ

令和8年度の歯科改定は、初診料・再診料の引き上げと物価対応料の新設、ベースアップ評価料の拡充、歯周病と口腔機能の管理の組み替えが中心です。点数の上下よりも、改めての届出と経過措置の期限を先に押さえると、返還のリスクを減らせます。経営への影響は歯科医院の収支構造の考え方で、項目ごとの算定件数から見積もるのが現実的です。


参考資料