施設基準は、人員・研修・設備・実績などの要件を満たした保険医療機関が、地方厚生(支)局長に届け出て初めて算定できる点数の条件です。歯科診療所では、届け出ていないと基本の点数そのものが下がるもの(初診料の注1)と、届け出て初めて加算や管理料を算定できるものの2種類がある、と押さえておくと整理しやすくなります。

届出は受理された日で算定の開始月が決まり、受理後も要件を満たし続けている間しか算定できません。以下では、令和8年度改定後の厚生労働省の通知と地方厚生局の案内にもとづいて、主な施設基準の位置づけと届出の実務を整理します。


1. 施設基準の2つの通知

歯科の施設基準の要件と届出様式は、次の2つの通知にまとめられています。

通知主な対象
基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第7号)初診料の注1、歯科外来診療医療安全対策加算、歯科外来診療感染対策加算、電子的歯科診療情報連携体制整備加算など
特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第8号)口腔管理体制強化加算、口腔機能実地指導料、歯科訪問診療料の注16、在宅療養支援歯科診療所、ベースアップ評価料など

要件の本文と届出の様式は同じ通知の中にあり、様式は「別添7」「別添2」といった添付の中に番号付きで収められています。


2. 歯科診療所で確かめる主な施設基準

一般的な歯科診療所で届出の有無を確かめることが多い施設基準は、次のとおりです。要件の詳細は通知の本文で確かめてください。

施設基準位置づけ要件の主な柱
初診料の注1(院内感染防止対策)届け出ないと初診料245点・再診料45点になる器具の患者ごとの交換・滅菌、常勤歯科医師の定期的な研修、院内研修、院内掲示
歯科外来診療医療安全対策加算1初診時に算定する加算医療安全の研修を修了した常勤歯科医師、医療安全管理者、AEDなどの装置、連携医療機関
歯科外来診療感染対策加算1・2初診時に算定する加算初診料の注1の届出、院内感染管理者、ユニットごとの吸引装置など
口腔管理体制強化加算管理料などへの加算歯科医師と歯科衛生士の配置、過去1年の算定実績、研修、連携体制
歯科訪問診療料の注16在宅療養支援歯科診療所以外で訪問診療を行う場合直近1か月の訪問患者の割合が95%未満
電子的歯科診療情報連携体制整備加算初診時・再診時の加算マイナ保険証の利用率、明細書の無料交付などの要件
歯科外来・在宅ベースアップ評価料賃上げの評価対象職員の賃金改善と報告

医療安全対策加算1の要件には、AED、パルスオキシメーター、酸素、血圧計、救急蘇生セットの保有に加えて、医療安全管理対策を実施している旨の院内掲示と、その掲示事項の原則ウェブサイト掲載が含まれています。掲示とウェブ掲載は、ほかの施設基準にも共通して求められることが多い要件です。

院内感染防止対策の要件の読み方は歯科の院内感染防止対策の施設基準で、口腔管理体制強化加算は口腔管理体制強化加算の要件と届出で詳しく扱います。


3. 届出の流れ

  1. 要件を満たしているかを確かめる:人員(常勤・非常勤の別)、研修の修了証、装置、実績の件数を、通知の要件と1つずつ照らす
  2. 様式を用意する:通知の別添にある届出書と添付書類の様式を使う。研修の修了を示す書類や、配置する職員の名簿を添付するものがある
  3. 管轄の窓口に提出する:所在地を管轄する地方厚生(支)局の都道府県事務所などに提出する。電子申請(保険医療機関等電子申請・届出等システム)に対応している施設基準もある
  4. 受理通知を保管する:受理後に届く通知の控えを、届出書の写しとあわせて保管する

九州厚生局の案内では、届出書に開設者の押印は不要とされ、届出の控えを保管するよう求めています。細かな手続きは厚生局ごとに案内があるため、管轄の案内で確かめます。


4. 受理日と算定開始の関係

地方厚生局の案内では、算定の開始は次のように決まります。

  • 月末までに受理された届出:翌月1日から算定できる
  • 月の最初の開庁日に受理された届出:その月の1日から算定できる

届出は「受理された日」が基準です。月末に郵送すると到着が翌月にずれ、算定開始が1か月遅れることがあります。開業時の届出の段取りは歯科医院の開業の流れで扱っています。


5. 届出の後に気をつけること

施設基準は、届け出た後も要件を満たし続けている間しか算定できません。九州厚生局の案内では、次のような場合に届出が必要とされています。

  • 要件を満たさなくなったとき:辞退の届出を行う
  • 届出の区分が変わるとき:変更の届出を行う
  • 届出書に名前を記載した医師や装置が変わるとき:変更の届出を行う

一方で、職員が入れ替わっても要件を満たし続けている場合は、変更の届出は不要とされています。常勤の歯科医師が1人しかいない医院で、その歯科医師が研修の要件を満たす唯一の人である場合は、退職や長期休業で要件を外れることがあるため、人の動きがあるたびに施設基準の一覧を見直します。

また、令和8年度改定で定例報告は在宅療養支援歯科診療所などを除いて廃止されました。報告がなくなった分、要件を満たしているかの自己点検は医院に委ねられています。


6. 見落としやすい点

  • 研修の有効期間:初診料の注1は、常勤の歯科医師が4年に1回以上研修を受けることが要件です。受講日を一覧に入れておかないと期限を過ぎます。
  • 名前が変わった施設基準:改定で口腔管理体制強化加算は「小児口腔機能管理料の注5」、歯科訪問診療料の基準は「注16」に位置づけが変わっています。
  • 掲示とウェブ掲載:院内掲示の事項は、原則としてウェブサイトにも掲載することが求められています。
  • 個別指導での確認:届出事項と実態の食い違いは、歯科の個別指導でも指摘の対象になります。

7. まとめ

歯科の施設基準は、届け出ないと基本点数が下がる初診料の注1と、届け出て初めて算定できる加算・管理料に分かれます。届出は受理日で算定開始月が決まり、受理後も要件を満たし続けることが前提です。届出の一覧と受理日、研修の受講日、要件に関わる職員の名前を1枚にまとめておくと、改定や人の入れ替わりのたびに点検しやすくなります。改定で届出をやり直す施設基準は令和8年度の歯科診療報酬改定で整理しています。


参考資料