歯科の院内感染防止対策の施設基準は、正式には「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」です。これを届け出ていないと、歯科初診料は272点ではなく245点、歯科再診料は59点ではなく45点になります。加算ではなく基本の点数に関わる基準なので、ほぼすべての歯科診療所にとって、届け出たうえで要件を切らさないことが前提になります。

その上に、初診時の加算として歯科外来診療感染対策加算1〜4があります(診療所は1または2、3と4は地域歯科診療支援病院向け)。以下は、令和8年度改定後の基本診療料の施設基準通知と、疑義解釈資料にもとづく整理です。


1. 初診料の注1の要件

基本診療料の施設基準通知(保医発0305第7号)は、初診料の注1の施設基準として次の6つを挙げています。

  1. 口腔内で使用する歯科医療機器等について、患者ごとの交換や、専用の機器を用いた洗浄・滅菌処理を徹底するなど、十分な院内感染防止対策を講じていること
  2. 感染症患者に対する歯科診療を円滑に実施する体制を確保していること
  3. 標準予防策と新興感染症に対する対策(抗菌薬の適正使用を含む)の研修を4年に1回以上定期的に受講している常勤の歯科医師が1名以上配置されていること(受講を確認できるものを保管)
  4. 職員を対象とした院内感染防止対策の院内研修等を実施していること
  5. 院内感染防止対策を実施している旨を院内の見やすい場所に掲示していること
  6. その掲示事項を原則としてウェブサイトに掲載していること(自ら管理するホームページ等がない場合を除く)

届出は別添7の様式2の6を使い、実績は要しません。令和8年度改定の前から届け出ている医療機関は、改めて届け出る必要はないと地方厚生局が案内しています。


2. 研修の内容で確かめること

令和8年度改定で、研修の内容に「抗菌薬の適正使用を含む」が加わりました。疑義解釈資料(その1)では、抗菌薬の適正使用の研修の内容は「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編」を参考にすること、令和8年5月31日までに受講した研修にはこの内容が含まれていなくてもよいが、6月1日以降に受講する研修には含まれている必要があることが示されています。

次の受講を計画するときは、研修の案内に抗菌薬の適正使用の内容が入っているかを確かめてから申し込むと、受講し直しを避けられます。


3. 歯科外来診療感染対策加算1・2の違い

歯科診療所が届け出る感染対策加算は1と2で、初診時に算定します(点数は加算1が12点、加算2が14点)。どちらも初診料の注1の届出が前提です。

要件加算1加算2
初診料の注1の届出必要必要
人員歯科医師が複数、または歯科医師1名以上と歯科衛生士もしくは院内感染防止対策の研修を受けた者1名以上歯科医師が複数、または歯科医師と歯科衛生士がそれぞれ1名以上
院内感染管理者配置配置
歯科ユニットごとの吸引装置等必要必要
常勤歯科医師の研修―感染経路別予防策と新型インフルエンザ等感染症への対策の研修を1年に1回以上
発生時の体制―ゾーニングができる体制、事業継続計画、医科の医療機関との連携、他の歯科医療機関から患者を受け入れる連携

加算1は人員と設備の要件が中心で、加算2は新型インフルエンザ等感染症の発生時を想定した体制の整備が加わります。加算2を届け出る場合は、年1回の研修の受講を確認できる書類の保管も必要です。


4. 届出までの手順

  1. 研修の受講状況を確かめる:常勤の歯科医師の研修の受講日と修了証を集め、4年以内(加算2は1年以内)に受講しているかを確かめる
  2. 院内の手順を文書にする:器具の交換・洗浄・滅菌の手順、感染症患者の診療の手順を、実際の運用に合わせて文書にする
  3. 院内研修を行って記録する:職員向けの研修の日付、内容、参加者を記録に残す
  4. 掲示とウェブ掲載を整える:院内感染防止対策を実施している旨を掲示し、同じ内容をウェブサイトに載せる
  5. 様式をそろえて届け出る:管轄の地方厚生(支)局に、通知の様式で届け出る

施設基準の届出全般の流れと、受理日と算定開始の関係は歯科の施設基準の届出で整理しています。


5. 届出の後に確かめ続けること

令和8年度改定で、初診料の注1や歯科外来診療感染対策加算に関する定例報告は廃止されました。報告がなくなった分、要件を満たしているかは医院が自分で確かめ続ける必要があります。

  • 研修の期限:受講日から4年(加算2の研修は1年)で期限が来る。受講日と次の期限を一覧にする
  • 常勤の歯科医師の在籍:研修の要件を満たす常勤の歯科医師が1人だけの場合、退職や休業で要件を外れる
  • 院内研修の記録:実施していても記録がなければ確認できない
  • 掲示とウェブ掲載の中身:改定後の名称や内容になっているかを確かめる

要件を満たさなくなった場合は、辞退などの届出が必要です。届け出ないまま算定を続けると、歯科の個別指導などで返還を求められる原因になります。


6. 見落としやすい点

  • 非常勤の歯科医師の研修だけで届け出る:要件は「常勤の歯科医師」の受講です。
  • 加算1の人員の数え方:歯科衛生士がいない場合でも、院内感染防止対策の研修を受けた者で要件を満たせるかを通知で確かめます。
  • 訪問診療への影響:初診料の注1の届出がないと、歯科訪問診療料も所定点数から10点を減じます。
  • 掲示だけでウェブ掲載をしていない:ホームページを持つ医院は、掲示事項の原則ウェブ掲載も要件に含まれます。

7. まとめ

初診料の注1は、届け出ないと初診料・再診料が下がる基本の施設基準で、4年に1回以上の研修を受けた常勤歯科医師の配置が要です。令和8年6月以降の研修には抗菌薬の適正使用の内容が必要になりました。感染対策加算は1が人員と設備、2が感染症の発生時の体制まで求める加算です。定例報告がなくなったので、研修の期限と記録を医院で管理する仕組みを持つことが大切です。改定で変わった点の全体は令和8年度の歯科診療報酬改定にまとめています。


参考資料